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クルアン・ドントリー 営業通信

楽器について(1) ― キム(1)

タイの伝統楽器について、当店で把握している情報をお伝えしていきたいと思います。1回目はキムです。

 

キムはタイで最もよく見かける楽器のひとつです。タイを旅行された方は一度や二度は街角で演奏場面に遭遇しているのではないでしょうか。開放弦の典雅な美しい響きは一度聴くと忘れられないものがあります。キムは中国の揚琴を原型にしていると言われており、ピー・パートやクルアン・サーイといったタイの伝統的な楽器とはやや異なる立場にあります。そのためか関連資料が意外に少なく、教則本以外にまとまった解説を目にすることがありません。

しかしながら、タイ国内においてもキムが伝統楽器としてはもっとも人気のある楽器のひとつであることは、間違いありません。タイの伝統楽器はけっこう高価なものが多いのですが(特にピー・パート合奏用の楽器)、キムは比較的に安価なものからありますので現地でも広く普及しています。当店で扱っている楽器を製造している工場では、年間500台程度のキムを生産しています。

 

○キムの種類

ハンマーで弦を叩くことによって発音する打弦楽器は、ダルシマー(Dulcimer)として欧米、アジアに広く伝わっているものです。キムもダルシマーの一種ですが、アユタヤ時代後期に中国よりもたらされ、タイ国内で独自に発展したものです。

タイにおいてキムと称される楽器は、大きくは「鉄キム」と「弦キム」に分類されます。「鉄キム」はグロッケンシュピール(鉄琴)を三分割して縦置きにしたような楽器ですが、目にすることはほとんどないと思われます。私自身も現物を見たことがありません。

鉄キム (C)เคร์องดนฅร๊ไทย สารคด๊

一般に「キム」と称される楽器は「弦キム」を指しています。金属弦をハンマー(スティック)で叩く、いわゆる「ダルシマー」の一種です。弦キムには「キム・ピースア」(または「キム・ヤク」)および「キム・クラパウ」の二種類があります。

上:キム・クラパウ  下:キム・ピースア

キム・ピースアは両側が丸みを帯びて上下の側に波型の装飾がほどこされた小型の楽器です。「キム」というとこれを思い浮かべる方も多いと思います。その愛らしい形状に加え、価格帯がやや手頃なこともあるためか、タイ国内のホテルやレストランで見かける妙齢の女性の生演奏では、キム・ピースアが使われていることが多いように感じます。楽器の素材としては、ドリアン、マンゴーなどのほか、上級機種でチークなどが用いられます。

一方、キム・クラパウは中国の揚琴の面影を残した楽器と言えます。音量、音質で優位にあり、音楽演奏における本格的な楽器となります。キム・ピースアに比べると二回りほども大型で高さ10センチ程度の脚(三方枠)がついています。軽いソフトケースに入ったキム・ピースアと比べると、頑丈なハードケースに入っているキム・クラパウの持ち運びはスーツケースを運ぶ手間に近く、かなりやっかいです。(長い距離の運搬は、車でないと難しいかもしれません。)

 

○音質・音色を左右する要素

キムは生産量も多く、楽器の種類やグレード、ハンマー(スティック)など付属品の種類も数多くあります。これらの違いによって音質・音色がかなり異なってきます。キムの音色を左右する要素としては、以下の4つが挙げられます。

1.楽器の種類(キム・ピースアとキム・クラパウ) 2.楽器の素材 3.弦 4.ハンマー(スティック)

音色および音質を左右する要素は、楽器の種類、要するにキム・ピースアとキム・クラパウの違いによるところが最も大きいです。これはボディーのサイズの違いなど音響上の物理的な違いによるものと考えられます。キム・ピースアが中音域あたりで音がまとまっているのと比べると、キム・クラパウは全音域にわたって音量が豊かで、低音域、高音域まで音がゆったりと延びるため、音の華やかさがまったく違います。特にキム・クラパウの多駒(弦)型モデルの音質については特筆するものがあります。

楽器の素材も楽器の音質に関わる要素です。同じ種類の楽器でも複数のグレードがありますが、特別な装飾品等を除いて、基本的に素材の違いによってグレード付けされているようです。当然ながら希少で高価な材料を用いた楽器は高価ですが、音質もなぜか良くなっています。(必ずしも希少で高価な素材の音響性能が高いとも言えませんので少々不思議なところです。素材のシーズニングや加工に特別な配慮がされているかもしれません。)

 

次回は、キムの弦、ハンマー(スティック)などについてお伝えしたいと思います。

 

※限られた資料、情報筋等を参考にしておりますので、内容について誤り等あればご指摘いただければ幸いです。

東京・タイロイカトン祭2008

11月8、9日に港区台場で開催された、東京・タイロイカトン祭2008に行ってきました。  

このイベントは、ロイカトンの紹介と日・タイ両国民の交流の場を創造するという目的で、例年開かれているようです。日曜日は小雨まじりのあいにくの天候の中、タイ文化にちなんだイベントが一日中催されていました。 

           

 タイの代名詞のひとつであるトゥクトゥクが展示されていました。地方ではソンテウとともにまだまだ健在ですが、バンコクでは最近めっきり数が減ってきたように思います。

   

       カトンのパレード                       タイ音楽の体験コーナーです。

    

会場内に立ち並ぶ屋台群です。

お店の方はもとより、ギャラリーにもタイ人の方が多く来られていたようで、さながらタイの文化祭の様相です。

周辺一体は独特の「あの」香りにつつまれていました。簡単に訪れることのできない海外の映像や音声についても手軽に体験することができる時代になりましたが、「香り」の体験だけは現地へ行かないと難しい領域として残されているのではないでしょうか。この日は、図らずも異国の疑似体験のひとときを味わうことができました。

音階・調律システムについて

タイ伝統音楽の特徴として、旋律性、リズム、非和声性に基づく水平的構造があげられます。これらのうち、独特な旋律の元となっている音階・調律のシステムに触れます。

 

タイ伝統音楽の音階は、1オクターブを7等分した七等分平均律とされています。理論的にはセント法(Ellis)での音程間隔が171.4セントとなるわけです。7等分ですとちょうど西洋のドレミファソラシドと対応し、タイ式の記譜システムもドレミ・・・を踏襲しているのですが、実際には西洋の音程の体系とは全くあてはまりません。

旋法として実際に使われるのは主として5音音階(pentatonic scale)ですが、曲あるいはフレーズによっては6音以上が用いられることもあります。

タイ音律の7つの音は、それぞれ固有の名称を持っており、アンサンブル形式や演劇形態のような特定の用途で主音(tonic)となる音がそれぞれ決まっています。例えば、

  • ピアン・オー・ラン(ドイツ音名のFに相当)    ピーパート・マイヌアン合奏での主音
  • ナイ(ドイツ音名のGに相当)   標準的なピーパート合奏での主音

 

実際には、ラナートやコン・ウォンのような旋律打楽器のチューニング方法の不安定要因もあり、正確な七等分ではありません。上に記したように理論的な音程間隔は171.4セントですが、実際の2音の音程間隔は165セントから180セントの間のようです。また、1オクターブの7等分は西洋の12等分に比べると1音の間が広く、許容範囲が大きいとも言えます。

ソー・ウーやソー・ドゥアンのレッスンを受けられた方はわかるかと思いますが、タイの音楽というものは音程に対してかなり鷹揚なところがあり、弦のチューニングが多少ずれていてもあまり気にしない先生が多いように思えます。これは西欧の楽器を学んだ人にとっては、かなり違和感を感じるところですが、これもメロディーラインが主体の非和声性の音楽によるものとも言えるかもしれません。

参考文献 : David Morton:The Traditional Music of Thailand 

タイ伝統楽器の材料について(1) ― カ・ヌン ―

タイの楽器に限ったことではありませんが、楽器の材料は、その地域特有の材料が使われることが多くみられます。また、それが地域特有の音色を奏でるわけです。タイ伝統楽器も、そのほとんどがタイ国内あるいは東南アジアを原産とする材料で作られています。タイ伝統楽器を見る上で、その材料、特に楽器部品の大半を占める木材はたいへん興味深いところですので、タイ伝統楽器の材料(特に木材)について、ご紹介していきたいと思います。1回目は、「カ・ヌン」です。

 

「カ・ヌン」(カヌン)という樹木、クワ科の一種でインド原産、現在では東南アジア、インド、ニューギニアなどに広く分布している樹木です。その果実が食用になるため広く植栽されています。直径は胸高で50~90cm、樹高は20m程度ですが最大45mにまでなる中、大高木です。材は軽軟かやや重硬、気乾比重0.40~0.55程度となります。家具や楽器材といった用途で利用されています。また、深みのある黄色という色調が好まれ、東南アジアでは宮廷の建材としても使われているようです。木材を煮出してつくる深い黄橙の染料が、仏教僧の僧衣の染料として使われていました。タイでは一般家屋の庭や寺院の境内などによく植えられているため、目にする機会が多い樹木です。(写真はチェンマイ ドイステープ寺院のカ・ヌン)

 

 

 

 

タイ伝統楽器では、チャケの主材料として使われるほかにキムなどにも使われます。当店で扱っているチャケは、すべてカ・ヌンで製作されています。

カ・ヌン(カヌン)という名称は一般の日本人にはあまりなじみのない名前ですが、熱帯の果物がお好きな方には「ジャックフルーツ」という名前でおなじみでしょう。日本のスーパーではほとんど見かけませんが、タイに行けばむき身で売られており、いつも買うことができます。ちなみにカ・ヌンの実は地球上で最も大きな果実であり、40kgを超えることもあります。木の幹から直接に実がなる「幹生果」で、ドリアンなどと同様です。

 

果物の木が楽器の素材になってしまうのが、いかにも東南アジアらしいところです。このような材は、ほかにもドリアン、マンゴー、ココナッツなどがあります。これらについても今後ご紹介していきます。

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