クルアン・ドントリー 営業通信
オートーコー市場
- 2010-02-26 (金)
- タイ一般
バンコクを含め、タイ国内には無数の市場が存在します。外国人にとっては手軽にエスニック気分を味わえることから、観光地と化している市場も多くありますが、当然ながらそのような市場は極々一部のもので、多くは地元の人たちの生活に根差したものや商業活動に関わるものです。
現地の方の商用に同行して訪れたのが、バンコクの北に位置する「オートーコー市場」です。ネット上ではかなり見受けられ、現地在住の日本人にはそこそこ知られているようですが、観光目的には無名といってよい市場です。それほど不便なところにあるわけではなく、意外にもウィークエンドマーケット(モーチット)の道路向かいという位置にあります。
農産物がメインの市場ですが、品質の高い高級食材を中心に扱っているのが、この市場の最大の特徴です。
市場のバルク売りには、「安い」という感覚がありますが、ここの食材は他の市場よりも値段帯がかなり上です。贈答用と思われる化粧箱入りのフルーツも並んでいて、”デパ地下”をイメージさせる市場です。
遠くから見ても質のよさそうに見える食材ばかり並んでいます。ご案内いただいた現地の方は、カニの買付けで値段交渉をしていました。
軍の幹部がヘリコプターで乗りつけて買い出しをしていくというオートーコー市場ですが、NHKハイビジョンで先日放映されたタイの米作の特集で、ここのコメ売り場のコメが紹介されていました。
確かにここのコメ売り場は種類がたいへん豊富で、白米のほかに茶や赤などのコメがあり、コメを主食とする我々にとっても、とても興味深いところです。複数の種類のコメを混合した「三色米」、「五色米」も販売していますが、もちろん日本のコメとは違い、どれも長粒米です。
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ラナート・エク(2) ― タイ伝統楽器について(5)
タイ伝統楽器について、ラナート・エクの2回目です。
○ラナート・エク概観
ラナート・エクの構造はきわめて単純で、舟型の共鳴胴の上に鍵盤を吊るしただけです。共鳴胴は上部が開いた箱で、船の形そのものです。水に浮かべればおそらく浮くでしょう。我々の感覚では、この姿形からは刺身を並べたものが容易に想像されます。共鳴胴の素材としては、ドリアン、マンゴー、カヌン、チーク、カリンなどが使われます。
鍵盤には両側に穴があけてあり、そこに細いロープを通して並べたものを共鳴胴の上に懸垂します。鍵盤の素材は、紫檀、手違紫檀、チークなどが使われます。鍵盤の裏の両端には調律用の錘(チューニングリード)が取り付けられています。鍵盤数は22ないし21鍵ですが、最近の楽器では22鍵が普通です。
共鳴胴と鍵盤は、それぞれに楽器の特徴を引き出すものですが、特に鍵盤はラナートの音色を直接的に左右するきわめて重要な部材です。ですので往々にして共鳴胴と鍵盤は別々に販売されます。
○ラナート・エクの種類
ラナート(木琴)には音域により「ラナート・エク」と「ラナート・トゥム」があることは、ご存知の方も多いかと思います。そのラナート・エクにもいくつかの種類があります。
1.ラナート・エク・ピーパート
普通、「ラナート・エク」といった場合、「ラナート・エク・ピーパート」を指します。ピーパート合奏やソロ演奏に使われる楽器です。幅が120~130センチ程度の大型の楽器です。
2.ラナート・エク・マホーリ
下の写真の左が通常のラナート・エク(ピーパート)ですが、右の楽器はやや小ぶりです。これは、マホーリ合奏の一形態であるマホーリ・クルアン・ペートに用いられる楽器で、”ラナート・エク・マホーリ”といいます。楽器形状、機能はラナート・エク・ピーパートと同じですが、楽器の大きさが若干小さくなります。現代では女性のラナート奏者も珍しくないですが、ピーパート合奏の演奏は、歴史的に男性の世界です。ピーパートで使用されるラナート・エク・ピーパートは、タイの小柄な女性にはやや手に余る大きさです。一方、マホーリ合奏やクルアンサーイ合奏には女性奏者が入ってきます。(特にクルアン・サーイでは女性が主体的) ややコンパクトなラナート・エク・マホーリは、マホーリ合奏における女性プレーヤーに合わせたもののようです。
ラナート・エク・マホーリを見かけることは少ないと思います。当店で取引している工場でも、通常の生産ラインでは製造していません。
3.ラナート・エク・ラーントン
タイ伝統音楽は、式典など格式の高い場において演奏される機会が多いのですが、場に合わせて「正装した」楽器が使用される場面も多くなります。楽器の種類と言えるかどうかわかりませんが、共鳴胴全体に緻密な彫刻が施され、金ぱくや螺鈿で装飾された楽器は、「ラーントン」と呼ばれています。
バンコクの国立博物館に行きますと、古びたラーントンを見ることができます。また、演劇の伴奏や市中の寺院などで催されるタイ・ダンスの伴奏でもよく目にします。
ラナート・エク・ラーントンは、その製作にあたって材料費・製作の手間とも莫大になるため、きわめて高価です。当店では今のところ扱っていませんが、この手の楽器には装飾に象牙を使用したものも多く、日本に輸入できる楽器は限られると思います。
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タイ伝統音楽のレパートリー(1)
- 2009-12-05 (土)
- タイ音楽
当店のCDのページを見ていただくとわかりますが、タイ伝統音楽のレパートリーはたくさんあります。初めての方は、曲目を見てもどのような曲か皆目見当もつかないでしょう。そこで、タイ音楽の成立、曲名の意味、定番曲や有名曲などをご紹介していこうと思います。
なかなか主観が入りやすい部分ですので、参考文献(The Garland Handbook of Southeast Asian Music)からの引用で、数回に分けてご紹介します。
今回は、作曲家とその周辺をお伝えします。
○タイ伝統音楽の作曲事情
タイ伝統音楽は、どのような人達により作曲されたのでしょうか。
1800年代から1900年代に作られた曲の多くは作曲者が知られています。しかし、それ以前のもの、つまりアユタヤ朝以前の曲については作曲者はまずわかりません。タイの音楽家は作曲するとき、紙の上に曲を書いて残すことはせず、頭の中だけで音と音楽構造を入念に作りこんでいました。曲を具体化するのは演奏の場であり、教師という立場でもある作曲者が他の演奏者に口述で作曲を伝える時でした。作曲者は、時には機械的にそれぞれの楽器パートを教えたり、時にはコンウォンヤイのパート(基本旋律)を演奏してみて、各パートにそれぞれのパッセージを想起させるという方法をとっていました。そのような方法で曲の全体像がアンサンブルの全パートに共有されことになります。作曲にあたっての所有権、著作権といったものは発達しませんでした。
タイの方々の名前は、ニックネームを日常的に使用することもあって非常にわかりにくいことはご存知でしょう。タイの作曲者名についても同様で、混乱の原因となります。時には知られた作曲家でもニックネームが一般的となっている場合もある一方、ラマⅤ世とラマⅥ世の時代以降、タイの国王は、著名な市民に階級と名誉称号の両方を授けてきたことから、事情はより複雑になっています。これら栄典に与った音楽家のうち最も有名なのは、一般にルアン・プラディット・パイロ(1881~1954)として知られるタイの最も有名な作曲家です。最近では映画”ホームローン”の主人公として知られていますが、彼の名はソーン(矢)、そして名字はシラパバンレン(音楽を演奏する)でしたが、ラマⅥ世は彼にルアン(サー・ネーム)と名誉称号プラディット・パイロ(美しい創造)を与えました。他の音楽家では例えば、”Recite Sweet Words”、”Be Adroit at Music”、”Beautiful Sounding Fiddle”といった意味の称号を受けている人達がいます。このような称号を持たない音楽家は、普通に”先生”として呼ばれていました。
作曲家の中には王族もいます。プラジャディポック(ラマⅦ世、在位1925-1935)は“クルン・クラトップ・ファン”(波の音)、”ラトリ・プラ・ダップ・ダオ”(星明りの夜)、”カメン・ラ・アウ・アウン”を作曲しています。ナリット皇太子は、タイ伝統音楽で最も有名な曲といわれる、“カメン・サイ・ヨク”を、1888年に作曲しました。
作曲家の中で、一般人として最も有名なのがタイ文化省芸術局のMontri Tramoteです。彼は、作曲家として数多くの作曲(“ソム・ソン・セン”(月光)、”ケック・ドイ・マウ”(かめを叩くインド人)を含む)を手がけるとともにであるとともに、タイ音楽史の第一人者でした。彼とその周辺の人達は、既往の古典楽曲に対してヴァリエーションを作曲しています。
さて、上で紹介されている曲ですが、現時点で当店で取り扱っているCDでは、以下に収録されています。(今後もどんどん増える予定です。)
”カメン・サイ・ヨク”は、タイ伝統音楽の超メジャー曲のため、多くのCDに収録されています。
ピーパート版 Solo Ra Nad Mai Nuom(TD-60)
キム版 Deaw-Kim(Kha-men-sai-yok)(TD-112)
チャケ版 Solo-ja-kae ; Lao-pan(TD-35)
”ソム・ソン・セン”(月光) ピーパート版 Wong-pi-path-Mai-nom (TD-04)
”クルン・クラトップ・ファン”(波の音) キム版 Deaw Kim Bung Bai(TD-109)
”ケック・ドイ・マウ” チャケ版 Solo Ja-kea(TD-19)
(「タイ音楽のレパートリー」では、タイ伝統音楽の楽曲名など、2、3回にわたってお伝えする予定です。)
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ビルマ(ミャンマー)音楽の演奏会 ― 聴いてきました。
神秘の国に誘われ~ミャンマー伝統音楽の楽しみ~
10月31日 北とぴあつつじホール
演目は、ミャンマー伝統音楽の代表的な合奏形式であるサイン・ワイン合奏、サウンガウクの演奏、オージー(太鼓)の演奏に、踊りを交えたものです。
舞台の緞帳が上がると、サイン・ワイン合奏のセットが現れました。パンフレットの写真そのものの金ピカのついたてに囲まれたセットに、まず驚かされました。
サイン・ワイン合奏は、打楽器合奏に管楽器を加えた形態で、タイのピーパート合奏に該当するものと思います。
向かって左側にゴング系旋律打楽器(タイのコンウォン)とネイ(タイのピー)、右側にリズム系打楽器、真ん中にパッ・ワイン(音程を持った太鼓を並べた旋律打楽器、タイでピーパート・モーン合奏に使われるプーン・マーン・コークに相当)で構成されます。
パッワインがピーパート合奏のラナートエクの役割となり、パッワイン奏者がコンサートマスターとして合奏の取り仕切りをします。合奏の音自体はラナートがパッワインに入れ替わったイメージで、パッワインの音が全体を特徴づけているように感じます。
音律は、タイのピーパートほどのクセはなく、西洋風のあっさりしたものでした。
サウンガウクは、いわゆる”ビルマの竪琴”として知られている楽器ですが、その音、音楽を知る日本人は、そう多くないでしょう。音量が非常に小さい上に響きが短く、ドライな感じで、ぽつぽつと雨だれのように聴こえる音です。元々宮廷で演奏されていた楽器ということですが、家庭内で演奏するにもよさそうな楽器です。
写真のサウンガウク演奏者、スー・ザー・ザー・テー・イーさんは、現在、東京藝術大学で音楽学を学ぶ留学生です。
本日のこの企画、合奏演奏、ソロ演奏、歌、踊り、操り人形など、盛りたくさんの演目に解説が加わり、2時間目いっぱいの充実した企画でした。ミャンマーの伝統音楽を日本で聴くというのは、たいへん貴重なものです。以前、2ヶ月ほどミャンマーに赴任したことがありますが、ミャンマー国内でも伝統音楽に触れる機会はなかなかないと思います。
翌日11月1日には、多少プログラムを変えたコンサートが東京藝術大学で行われています。
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タイ伝統楽器の材料について(2) ― チーク
1年ぶりの「タイ伝統楽器の材料について」ですが、今回はチークについてお伝えしたいと思います。
チークは、タイを含むインドシナ半島をはじめとして、ミャンマー、インドなどで産出される木材です。耐久性、耐腐食性などにおいてたいへん優れた性質をもち、さらに見た目の美しさも備えた貴重な樹種です。世界的に広く利用されており、よく知られた木材です。
○チークといえばタイ、タイといえばチーク
タイでは北部から西部にかけて混生落葉樹林(モンスーン林)として生育しています。タイにおける気候条件、一年を通じて風速が緩やかであるなどの条件がチークの生育に好条件であり、タイの林業の中核をなすものが高品質のチークの生産でした。もともと現地では、主に建築材として利用されていたようで、特に北部のランナー朝の寺院や宮殿では、ふんだんに用いられたチーク材を目にすることができます。19世紀後半に欧米に知られるようになってから伐採量が急増し、天然林が激減しました。現在、タイ国内では、厳重な管理の元に植林が行われているようです。伐採は全面的に禁止と記憶していますが、現在はどうなのでしょうか。
陸上輸送の手段が発達していなかったタイやミャンマーでは、水上輸送により消費地へ運ばれていました。北部原産地で伐り出されたチークは、像や牛によって河岸の集積場まで搬送されて一旦集積され、その後、雨季の増水時にその水流を利用して運ばれていました。川の途中の集積地までは管流しという形で「放流」され、集積地でいかだに組んで輸送するといった方法です。「放流」ですから、途中で引っかかったり沈んだり、なかなか難しいもので、原産地で伐採されてバンコクに到達するまで5年程度はかかったようです。特に管流しでは、途中でなくなってしまうものも多く、一定の損失がつきものでした。
ちなみに、輸送の途中でなくなってしまったチークを拾い集めるといったビジネスが、現在も存在します。特に、水中に沈んでしまったようなチーク材には良質なものが多く、貴重だとのことです。ゴルフ場の「ロストボール」拾いのようなビジネスですが、ミャンマーでは日本人の方でこのようなことをやっておられる方がいらっしゃいました。
チークをタイ語で「マイ・サク」と呼びます。マイは木を意味しますが、サクは染料を意味します。これは、チークの葉から赤色染料を採集したことに由来するようです。
建築をはじめとして艦船、車両の材料として利用されてきたチークですが、現在のチーク材の利用としては、高級家具や装飾品が最も身近なところでしょう。チークの木彫りは、タイの土産店の定番アイテムのひとつです。
○楽器材としての利用
タイ伝統楽器でも、ややハイグレードの楽器の主材料としてチーク材が用いられています。キム・ピースアの上級モデルとしてチーク材の楽器を用意しているメーカーが多いので、これをよく目にするところです。キム・ピースアの優美な形とチークの肌理・色合いは、たいへんよくマッチします。他の楽器では、ラナートなどでチーク材が使われることがあります。素材の性能はともかくとして、見た目の主張が強い材料なので相性が問われるでしょう。
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ビルマ(ミャンマー)音楽の演奏会
ここ最近、東京にて東南アジア伝統音楽のコンサートをよく目にしますが、10月31日と11月1日にビルマ(ミャンマー)音楽の演奏会が予定されています。
北とぴあ国際音楽祭2009 神秘の国に誘われ ~ミャンマー伝統音楽の楽しみ~
アジア・躍動する音たち’09 神秘の国に誘われ ~ミャンマーの伝統と現代の音楽~
いずれも東京藝術大学で作曲を学んだビルマ人演奏家を中心としたコンサートです。
東南アジア大陸部として文化形成の過程に関わりが深いことから、ビルマやカンボジアの伝統楽器はタイの伝統楽器とたいへんよく似ています。
ビルマというとまず「ビルマの竪琴」(サン・ガウ)が想い起こされますが、今回のコンサートでは、サン・ガウの他にパットワイン(音程の違う太鼓を円形に並べた楽器、タイのプン・マン・コーク)、ネイ(リード楽器、タイのピー)など、ビルマの代表的な楽器が登場します。
日本国内ではめったに聴くことのできない貴重なコンサートになりそうです。
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アジア オーケストラウィーク2009 聴いてきました。
先日ご紹介しました「アジア オーケストラウィーク2009」(東京オペラシティ コンサートホール)の初日、タイ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏を聴いてきました。
冒頭は、本日最も期待のラナート演奏です。開場後にはすでにステージ上にラナートがセッティングされており、普通のコンサートとは一種異なる雰囲気を醸しています。
このラナート、タイ舞踊の伴奏等で用いるラーン・トン(金ピカの装飾楽器)ではなく完全なコンサート用楽器ですが、木目がたいへん美しく見るからに高価な楽器です。(ウン十万バーツ級?)
曲はソロ・ラナートとオーケストラ伴奏の「マー・ヨーン」です。ラナートのパロン・ユエンヨンは、このようなコンサートのステージにはあまり慣れていない様子で着席。演奏開始直後はやや緊張が見られましたがすぐにペースに乗り、その後はこれでもかこれでもかと繰り出す超絶技巧の連続。ただただ唖然とするばかりです。演奏の中にはちょっときわどいところもありましたが、それがほとんど帳消しになってしまうような演奏です。マイケン(マレットの種類名)が放つ華やかな音は1600席のホール全体に鳴り響き、オーケストラのトゥッティ(全奏)にも決して引けをとらない音量でした。
パロン・ユエンヨンはたいへん朴訥とした風情の青年ですが、彼の演奏前後のぎこちない所作と、それとはまったく別人のような華麗な演奏とのギャップが印象的でもありました。
2曲目はタイのチェロ奏者タパリン・チャロンソックのコンチェルトです。音量に乏しく、やや迫力に欠く演奏でしたが、こじんまりと丁寧にまとめたといった感じです。
さて、オーケストラ自体ですが、”助っ人”が2~3割程度入っており、外国人を上手に使いこなすタイの伝統(?)といったところでしょうか。パートによっては今後の精進を願わずにはいられないところですが、全体的にはそこそこのレベルにあるものと感じます。また、今回の海外公演に対しては相当な思いがあったのか、特にメインのシンフォニーでは、強い熱意が伝わってくる好演奏でした。
しかし、とにかくラナート演奏はすごかった。タイ音楽の歴史の中で、ラナートの演奏技術がいかに発展したかを見せつけられるものでした。このようなラナートを今後も聴いてみたいものです。
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ラナート・エク(1) ― タイ伝統楽器について(5)
「楽器について」 ― 今回は、タイ伝統楽器の中でもキム、ソーウーと並んでお問い合わせの多いラナート・エクについてお伝えします。
ラナート・エクは、木片が奏でる硬軟織り交ぜた美しく神秘的な音色を持ちますが、タイの音楽史上、演奏技術が高度に発達した経緯から、たいへん幅広い音楽表現が可能となった旋律打楽器(木琴)です。ピーパート合奏における中心的な役割を担う、タイ伝統音楽における代表的な楽器のひとつですが、近年、ラナートを題材にしたタイ映画が大ヒットし、この映画が本邦で上映されたことから日本でも知られるようになりました。
○ラナートの起源
木琴という形態の楽器がタイに現れたのは、アユタヤ時代の後半と考えられており、その起源にはいくつかの説があります。そのひとつは、「クラップ・セーパー」という拍子木の発展形というものです。クラップ・セーパーの「セーパー」とは、楽器の伴奏に合わせて独唱する長篇劇詩ですが、セーパーの長い詠唱で合いの手のような役割をするのがクラップ・セーパーです。このクラップ・セーパーを台に吊るしてマレットで叩くことを誰かが考えつき、さらに音程という概念を加えられて木琴に発展したのだろうという説です。もうひとつは、タイで生まれたのではなくクメールから移入したという説です。その根拠は、当時、大陸部の音楽文化に影響を与えていたジャワ島に、すでに木琴が存在していたことによります。
○ラナートの語源
「ラナート」という語は、ソーサームサーイ(=弦楽器+三弦)やコンウォン(=鐘+円状)のような楽器の種類・形状を表す単語ではありません。ラナートの語源にもいくつかの説があります。ラナート・エクの共鳴胴の形状は、タイの運河を行き来する小舟の形状に酷似しています。ラナートという語には、ある種の船の梁材の意味もあり、ここから来ているという説がひとつです(タイ語の辞書をひっくり返してみると、「船底に敷く竹のござ」という意味もあります)。
もうひとつは、インドの古典楽器のひとつに”ヴィーナ”という弦楽器がありますが、ここから来ているという説です。ヴィーナはチューニングが固定された楽器であり、ヴィーナのサンスクリット語名raghunatha-venaが、同じ固定チューニングのラナートに流用されたというものです。
○ラナートという楽器は
数年前に伝説的ラナート奏者を題材にした映画「ホームローン」(日本名:風の前奏曲)が上映されたためか、東南アジアの数ある伝統楽器のひとつであるラナートが、日本でも知られた存在になっています。その割には、演奏シーンがタイ舞踊の伴奏や式典に限られるため、実物を見て演奏を聴く機会はキムやソーウーに比べるとやや少ないかもしれません。
まず、楽器の大きさですが、想像される以上に大きい楽器かと思います。「風の前奏曲」を銀座テアトルシネマでご覧になった方は、映画館のロビーにラナートが飾ってあったのを覚えていられるかもしれませんが、イミテーションなのか妙に小さいものでした。ピーパート合奏用の実楽器では、全幅130センチ程度の大きさです。ピアノと比べてみますとその大きさがわかるかと思います。ピアノの幅よりやや小さいくらいです。
次回以降、ラナート・エクを少々細かく見ていきたいと思います。
○お知らせ
冒頭の写真の後(および最後の写真)のラナート・エクを、現品格安にて販売いたします。詳細につきましては、以下までお問い合わせください。
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アジア オーケストラウィーク2009(ラナート演奏が聴けます)
文化庁が主催する「アジア オーケストラウィーク2009」に、タイ・フィルハーモニック管弦楽団が登場。ラナートの演奏が聴けます。
毎年、アジア各国のオーケストラを招へいし、各国の特色を生かした興味深いプログラムで公演を行っていますが、第8回目の今年はタイ・フィルハーモニック管弦楽団が登場します。
プログラムの冒頭は、新進気鋭のラナート奏者によるタイ古謡「マー・ヨーン(歩む馬)」
(ラナートソロによる「マー・ヨーン」のCDはこちら:ディヨウ・ラナート・マー・ヨーン)
おそらくオーケストラをバックにしたラナートのソロ演奏になると思いますが、日本国内でラナートの本格的な演奏を聴くことができる貴重な機会かと思います。
2曲目は、タイのソリストによるチェロコンチェルト、メインはチャイコフスキーの交響曲といったスタンダードなプログラムです。
○詳しくはこちら
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タイ伝統音楽の楽譜(1)
- 2009-08-28 (金)
- タイ音楽
タイの伝統音楽、特にピーパート合奏では、プレーヤーの記憶に基づく口承伝承によってレパートリーが伝えられていくことが普通です。
これに対して、キムやクルアンサーイの各楽器では、楽譜の利用が一般的となっています。五線譜が使われることもありますが、タイ伝統音楽で一般的に使われているのは、タイ文字でタイ音名を表したもので、楽器によってはこれをタブ譜として表現します。擦弦楽器(ソー・ドゥアン、ソーウー)、管楽器などでは、タイ文字ではなく運指を数字で表したものも使われます。
このようなタイ楽譜の歴史は比較的新しく、1940年代以降に使用されているようです。
タイの音階がたまたま(?)7等分で、西洋の音名があてはめられるためか、タイ音名も一応「ドレミファソラシ」と命名されていて、それぞれの音名のイニシャルが音をあらわすようになっています。
タイ楽譜を読むには、この7つを覚えればOKです。装飾記号などがあるものの、楽譜を読む基本としては、これ以外に覚えることはありません。タイ文字を習得されている方にとっては、レとラが間違えやすいですね。
タイ楽譜では、1段を8つに区切った”小節”の中に音符が4拍入ります。この1拍が概ね16分音符あるいは8分音符といった感じとなります。音の延ばしは”‐”で示されます。
西洋の五線譜に慣れ親しんだ人にとって最初の関門は、楽譜上における強拍と弱拍の位置です。タイ楽譜では、チンの打音と一致する強拍が、必ずしも小節線の頭となりません。タイ楽譜の”小節線”は、五線譜の小節とは意味合いが異なりますので、注意が必要です。演奏を聴きながら楽譜を追っていくと、たいへんわかりやすいのでお勧めです。
キム、ソーウー、ソードゥアンの楽譜では、数段に分けて弦ごとに音符が記述されるタブ譜が採用されており、演奏方法を示したかたちとなっています。
楽譜の具体的な読み方については、後日、キム譜を例にとりあげてみたいと思います。
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