タイ伝統楽器について、ラナート・エクの2回目です。
○ラナート・エク概観
ラナート・エクの構造はきわめて単純で、舟型の共鳴胴の上に鍵盤を吊るしただけです。共鳴胴は上部が開いた箱で、船の形そのものです。水に浮かべればおそらく浮くでしょう。我々の感覚では、この姿形からは刺身を並べたものが容易に想像されます。共鳴胴の素材としては、ドリアン、マンゴー、カヌン、チーク、カリンなどが使われます。
鍵盤には両側に穴があけてあり、そこに細いロープを通して並べたものを共鳴胴の上に懸垂します。鍵盤の素材は、紫檀、手違紫檀、チークなどが使われます。鍵盤の裏の両端には調律用の錘(チューニングリード)が取り付けられています。鍵盤数は22ないし21鍵ですが、最近の楽器では22鍵が普通です。
共鳴胴と鍵盤は、それぞれに楽器の特徴を引き出すものですが、特に鍵盤はラナートの音色を直接的に左右するきわめて重要な部材です。ですので往々にして共鳴胴と鍵盤は別々に販売されます。
○ラナート・エクの種類
ラナート(木琴)には音域により「ラナート・エク」と「ラナート・トゥム」があることは、ご存知の方も多いかと思います。そのラナート・エクにもいくつかの種類があります。
1.ラナート・エク・ピーパート
普通、「ラナート・エク」といった場合、「ラナート・エク・ピーパート」を指します。ピーパート合奏やソロ演奏に使われる楽器です。幅が120~130センチ程度の大型の楽器です。
2.ラナート・エク・マホーリ
下の写真の左が通常のラナート・エク(ピーパート)ですが、右の楽器はやや小ぶりです。これは、マホーリ合奏の一形態であるマホーリ・クルアン・ペートに用いられる楽器で、”ラナート・エク・マホーリ”といいます。楽器形状、機能はラナート・エク・ピーパートと同じですが、楽器の大きさが若干小さくなります。現代では女性のラナート奏者も珍しくないですが、ピーパート合奏の演奏は、歴史的に男性の世界です。ピーパートで使用されるラナート・エク・ピーパートは、タイの小柄な女性にはやや手に余る大きさです。一方、マホーリ合奏やクルアンサーイ合奏には女性奏者が入ってきます。(特にクルアン・サーイでは女性が主体的) ややコンパクトなラナート・エク・マホーリは、マホーリ合奏における女性プレーヤーに合わせたもののようです。
ラナート・エク・マホーリを見かけることは少ないと思います。当店で取引している工場でも、通常の生産ラインでは製造していません。
3.ラナート・エク・ラーントン
タイ伝統音楽は、式典など格式の高い場において演奏される機会が多いのですが、場に合わせて「正装した」楽器が使用される場面も多くなります。楽器の種類と言えるかどうかわかりませんが、共鳴胴全体に緻密な彫刻が施され、金ぱくや螺鈿で装飾された楽器は、「ラーントン」と呼ばれています。
バンコクの国立博物館に行きますと、古びたラーントンを見ることができます。また、演劇の伴奏や市中の寺院などで催されるタイ・ダンスの伴奏でもよく目にします。
ラナート・エク・ラーントンは、その製作にあたって材料費・製作の手間とも莫大になるため、きわめて高価です。当店では今のところ扱っていませんが、この手の楽器には装飾に象牙を使用したものも多く、日本に輸入できる楽器は限られると思います。
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