タイ伝統音楽・音楽システム ― クルアン・ドントリー

タイ伝統音楽とは - 音楽システム

 

タイ伝統音楽とは ― 音楽システム

タイ伝統音楽の特徴として、旋律性、リズム、非和声性に基づく水平的構造があげられます。 独特な旋律の元となっている音階のシステムをご説明します。

音階

タイ伝統音楽の音階は、1オクターブを7等分した七等分平均率とされていますが、理論的な音程とはややずれがあります。 また、旋法として実際に使われるのは5音音階(pentatonic scale)で、これが東洋風の雰囲気を形成しています。

タイの音律と西欧音楽の音律の比較

タイの音律と西欧音楽の音律の比較(上段:タイ 下段:西欧 単位:cent)

タイ音律の7つの音には、それぞれ名称があり、それぞれ特定の用途での主音(tonic)となります。例えば、

  • ピアン・オー・ラン(ドイツ音名のFに相当)    ピーパート・マイヌアン合奏での主音
  • ナイ(ドイツ音名のGに相当)   標準的なピーパート合奏での主音

実際には、ラナートやコン・ウォンのような旋律打楽器のチューニング方法の不安定要因もあり、上の図のような正確な七等分ではありません。 また、1オクターブの7等分は西洋の12等分に比べると1音の間が広く、許容範囲が大きいとも言えます。

ソー・ウーやソー・ドゥアンのレッスンを受けられた方はおわかりかと思いますが、タイの音楽というものは音程に対してかなり鷹揚なところがあり、 弦のチューニングが多少ずれていてもあまり気にしない先生が多いように思えます。これは西欧の楽器を学んだ人にとっては、かなり違和感を感じるところですが、 これもメロディーラインが主体の非和声性の音楽によるものとも言えるかもしれません。

アンサンブル形式

タイ伝統楽器は、ソロ楽器としても演奏されますが、長い歴史の中でいくつかの合奏形式が形成されました。 現代では、ピー・パート、クルアン・サーイ、マホーリが合奏の中心的形態となっています。

初期のアンサンブル

初期マホーリ合奏 合奏形態として知られる最も古いものとして、”カップ・マイ”があります。これは、歌手、ソー・サーム・サーイ、バンドー(打楽器の一種)の3人の演奏者で構成された合奏でした。 近現代タイ伝統音楽の花形とも言える旋律打楽器合奏が現れるのは、やや時代が後となります。黎明期の合奏は弦楽合奏からスタートしていると考えられます。

現代の管弦打楽器の編成をマホーリと呼んでいますが、そもそも初期の弦楽合奏がマホーリと呼ばれていました。 この初期のマホーリ合奏は、クラチャッピ、ソー・サーム・サーイ、トン、歌手の4人編成でした。(右:写真) 時代を経るにしたがってクルイや打楽器が追加されていきました。

一方、旋律打楽器のアンサンブル(ピー・パート)は、舞台芸能の伴奏として始まったと考えられます。アユタヤ時代に始まり、バンコク時代に発展しました。

ピー・パート合奏

ピー・パート合奏 ラナートなど旋律打楽器、リズム用打楽器、ダブルリードなどで編成される合奏です。

宮廷文化の一つとして発達した編成で、主に儀礼音楽、影絵芝居、仮面舞踏劇(コーン)、舞踏劇等の伴奏に用いられています。 右の写真は最も小さな編成のものですが、さらに多くの楽器が加わり、10人を超える大きな編成もあります。

クルアン・サーイ合奏

クルアン・サーイ合奏 弦楽器はタイ伝統楽器として古い歴史を持っており、そのアンサンブルには様々な楽器編成の変遷がありました。 現在に伝えられるクルアン・サーイ合奏は、弦楽器(ソー・ドゥアン、ソー・ウーおよびチャケ)、クルイ、打楽器でを中心とした編成です。格式が高いピー・パットに比べると、 庶民の生活に根づいた演奏形式であり、一般の演奏会、結婚式、宴会などで演奏されています。

マホーリ合奏

マホーリ合奏 マホーリ合奏とは、元々は弦楽器のアンサンブルを意味していました。
現在では、ピー・パット編成とクルアン・サーイ編成をあわせて、さらに主たる楽器としてソー・サーム・サーイを加えた大規模な編成です。

参考文献:
  • David Morton The Traditional Music of Thailand
  • ประวัติ  การดนตรีไทย  ปัญญา รุ่งเรือง
  • ตามรอย  โหมโรง  ไพศาล อินทวงส์
  • 植村幸生・柘植元一 アジア音楽史